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エッセイSP(スペシャル)

ご縁・・

たかやまじゅん

2022年5月23日

 子どもの頃、家の周りは町工場が多く、そこかしこに折れた釘や鉄くずが落ちていて、紐で繋げた磁石を引きながらジャリ道を歩くと面白いほど集まってくる。これを廃品回収に持って行くとその日の小遣いくらいになった。
 磁石はプラスとマイナスの二つの極が、引き合ったり反発をする。人や物との縁も同じで、この世で最初に縁を結ぶのがふた親になる。成人して社会人となりやがて家族と言う関係が出来た。かつて転勤して棲んだ土地は、離れても人との繋がりが続き、今では故郷のように思え、これこそ地縁による賜物と言える。
 この縁の読み方は一般的な「えん」に始まり、「ゆかり、ふち、へり、えにし」などがあり、たったひと文字だがその意味は奥深く、日本では古来より大切にされ、歌にも詠まれてきた。
 ことわざでも「袖振り合うも他生の縁」や「縁の下の力持ち」など日常生活に密着し、公私共に〝ご縁〟を持てたことは数えきれない。だが結ばれたこの縁がつらい別れになることもあった。今はその一つ一つが走馬燈のように甦る。
 また身の周りにある物との出会いも同様で、本好きの私は3日と空けずに書店の棚を覗く。そして新刊の帯を見た瞬間、まるで磁石に引き寄せられたかのように本を手にしている。そして読み進めるうちこの本を読めてよかったとの思いが湧くことも少なくない。
 直近で、旧知の人から「こんな本が出てきた」と私が探求しているものを贈られ、また長い間探しても手に入らなかった書籍が仲間から届き、そこには「これ探していたはず」と添え書きがあった。これこそ長年培ってきた縁の妙味を感じる。
 縁に伴い〝運〟もついて回る。それは仕事上で人との関わりも多少あった。また何かに応募してハズレたり、自分の思い通りにならないことも茶飯事で、そんな時に運がなかった、縁がないと諦めてしまうか、それとも来るべき機会に備えを講じ待つのかで、自ずとその後の処し方が違ってきた。
 このところ仲間内では、「溜まったものを片付けている」とか「集めたのを処分した」と終活を目指した物仕舞いや断捨離に加え、賀状仕舞いも増えている。
 だが私にとって人や物との関わりは、これらとは逆方向になって、付いたり離れたりしながら次のご縁を楽しむ。これこそ諺に曰く「縁は異なもの味なもの」。

◎プロフィール

〈このごろ〉アウトドアをする人から山ワサビが届く。札幌駅に隣接するデパートの野菜売場に葉生姜も並び、旬の好物が食卓を彩る。

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