自販機・・
2022年11月21日
日常で周りを見渡すと、至る所に色とりどりの自動販売機があり、最近は食品を始め多種多様な品揃えで、無人販売の最大のビジネスツールとして展開されている。
自販機の中でも一番利用するのは、やはり飲料系ではなかろうか。子どもの頃は、駄菓子屋でラムネやサイダーの瓶ものだったが、自販機が普及するとスポーツドリンクやお茶のペットボトル、そして缶コーヒーになった。
かつて、勤めていた会社で事業の一環として缶飲料が扱われ、やがて自動販売機を導入することになった。そして奇しくもプロジェクトのリーダーを任じられた。しかし飲むのは好きなのだが、販売ノウハウは全くの素人に等しい。
そこで伝手を辿り、幸いにもある飲料メーカーの事業所を尋ねた。そこでは飲料業界の現状に始まり、ボタンを押す頻度の高いコインの投入口近くには何を配置し、全体のレイアウトをどうするかなど詳しく教えを乞うことが出来た。
そして先ずは社内に設置することで、商品の配列や入替えを覚え、出勤するとロビーにある自販機の前に立ち〝売切れ〟のランプを確認するのが、毎朝の日課となった。扉を開けて缶を補充する際、〝カチャカチャ〟と缶の流れる音は、今でも耳にこびり付いている。こうしてマニュアルを作成し、社内でのレクチャーを行った。
件の講習では、屋外で設置した際の注意事項として、自販機が歩道などにはみ出すと、人がつまずき危険を及ぼすので、絶対避けることを厳しく教えられた。これを人にどう伝えるか、思案の末に思い付いたのが洋裁や手芸の型紙であった。これなら設置スペースは、一目で分かると模造紙を切り抜いて作成する。
こうして自販機の設置が推進され、やがて扱う台数もアップしたことから、全国的なセミナーで事例発表をする機会に恵まれた。この時、前段として自販機の歴史を取り上げ、古代エジプトでは、硬貨の重みで聖水が蛇口から出る装置があったこと。1615年のイギリスに煙草や切手の自販機があり、日本は明治23年の「自働郵便切手葉書売下機」が現存していると紹介した。
あれから30数年経ち、今でも自販機を目にするとアイテムの並べ方や新製品が気になってしまう。冬期間、雪山の間に止まるベンダーの車両があると、思わず「たいへんだな」とあの頃を思い浮かべるのだった。
◎プロフィール
〈このごろ〉映画の主題歌は数多い。家族の眼から描く昭和56年の映画「連合艦隊」は、『群青』(谷村新司)であり、その想いが心に沁みてくる。