書を学ぶ
2023年3月27日
昨年の春に町の公民館で、玄関の掲示板を何げなく見た。「めむろ書道アカデミー」講座の受講生を募っていた。(書道を習ってみたい......)
講師が著名な書家の八重柏冬雷先生(毎日書道展審査会員)。書道教室でいつか学びたい、それが長年の私の願いでもあった。
だが、私の書はお粗末なものだ。高校では書道クラブも芸術教科もとっていない。ただ、デザイナー家業として筆文字風なロゴを作ることがあったが、手本をまねていただけだった。たしか「三体千字本」の本を愛用し、それをお手本に筆字を書いていたから、まったくの我流ではなかったが。
副業としての取材を3月いっぱいで辞めていたので、土曜日の10時からの講座には通うことが可能だった。だが、本業の新規のデザインを断り、副業も辞めたのは古い自宅の片付けに専念するためだった。「書道教室に通いたい。5月から3月までの9回だから......」と妻に説明するが、しぶしぶの同意だった気がする。
5月は、基礎の臨書として、古い書体を倣った。隷書や行書、楷書と書きながら書道の知識も学んだ。作品に押す「政」という印も自分で彫った。
新年からは詩文で好きな言葉を書いた。私は論語から引用した。「我逢人」(人と逢ってすべてがはじまる)と書いた。意味は、私の人生そのものだった気がする。多くの恩人によって推され支えられて生きてきた気がする。
2月は前衛書を書いた。
アート的表現を意識するが、私は文学にとらわれがちな言語人間なのか、文字の形に影響をうけてしまう。「言霊」と書いた。
3月の最後の講座は大人のジャンボ書道「大筆で一文字を書く」だった。今まで児童の寺小屋や小学校の体育館でジャンボ書道を見学する機会があった。広い講堂の床に靴を脱いでシートに上がり、約70センチ四方の紙に向かって太い筆で「遊」の字を書いた。気持ちが高ぶった。
2月には必要にせまられて礼状など3通の手紙を書いた。手紙文はなれているが、書体がていねいに美しく書けていた。あきらかに「書」を習った成果だと思った。
◎プロフィール
●心況(よしだまさかつ)
コロナ禍で人が集う場を自粛していたが、サッカーや野球を楽しむ文化が戻ってきたのはうれしい。趣味は読書と映画鑑賞。