エルダ・・
2024年1月29日
先ごろ2050年までの『全国地域別将来推計人口』が発表され、中でも道内の減少率は加速する懸念があり、65歳以上が42%以上見込まれると大きな見出しが新聞にあった。因みに65歳と言えばWHOの定義で高齢者とされ、75歳からは後期高齢者となる。
たいがい高齢者と聞くと〝年寄り〟と言ったイメージが強い。江戸時代の中期に、京都で作られた『いろはかるた』が大阪や江戸に広まり、『江戸いろはかるた』の〝と〟は、年齢を考えずに強がり若い人を真似して失敗する例えの「年寄りの冷や水」で、年長者からよく耳にしたものだ。
三代将軍徳川家光の頃、江戸幕府の職制に若年寄があり、これは筆頭である老中(年寄り=おとな)に次ぐ〝若き年寄り〟とされ、また相撲界の年寄は、日本相撲協会が定めたもので、年配者の意味ではなく力士を指導する立場にあたる者だそうな。このように歴史上や身近で年寄りと言う言葉が使われてきた。
ところが、最近は高齢者を表現する時に「経験豊かな」や「先任の...」といった位置付けに変わり、まして英語圏では老人の総称であるオールドは、差別用語として認知されつつあった。今日、オールドを別の言葉で表現しているのが、公共交通機関の優先席〝シルバーシート〟、またシネコンのチケットなどは〝シニア割引〟で、スポーツのシニアは上級者を示している。
いま周りを見渡すと、物事を探求することや趣味に精通して年齢を感じさせない人も少なくない。私も毎月エッセイを綴り、またラジオ番組にレギュラー出演し、さらに団体の役員として運営に携わることでアクティブな毎日となった。
そして今年の誕生月を迎えると75歳、まさに後期高齢者の仲間入りをする。しかしこの高齢者と言う括りに違和感を覚えるようになり、シルバーやシニアでもない呼び方がないものか調べると、英語で「elderly people」と表していた。このエルダリーとは、「お年を召した」とか「年を重ねた」を意味して、「old」より丁寧な響きが特徴とある。これを縮めると〝エルダ〟で言い易く、友人と齢の話題で盛り上がった際、「今夏、私はエルダになる」と告げてみると「ライオンの映画...⁉」と返ってきた。
それはベストセラーを映画化した昭和41年(1966年)公開の『野生のエルザ』であり、思わず二人して笑い転げてしまうのだった。
◎プロフィール
〈このごろ〉家の前で雪かきをしていると通勤する人たちと会う。冬期間しか顔を見ず、「お元気でしたか」「行ってらっしゃい」の挨拶が始まる。