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エッセイSP(スペシャル)

銭湯・・

たかやまじゅん

2024年3月18日

 風呂屋は江戸時代初めに、伊勢松坂出身の与市が現在の東京大手町付近の橋詰めで、入浴料が一銭で入れる〝銭湯〟を始めたことに由来するそうな。
 そして、子どもの頃に通っていた銭湯は、浴室のタイル壁に富士山と松原のペンキ絵が描かれて、これは大正時代に東京神田の銭湯が、浴槽の壁に背景画を掲げて普及したとされる。こうしてお湯の温もりが疲れた身体と心までも癒してくれた。
 数年前まで、家から通りを渡ると銭湯があり、雪片付けで疲れた日には〝 ゆ 〟と染め抜かれた暖簾を潜る。湯船で町内の長老たちと顔見知りとなり、界隈の昔話に花を咲かせたものだ。
 銭湯は昔も今もコミュニケーションの場であり、赤い文字でケロリンと書かれた黄色い桶、洗い場の鏡には○○工務店などの鏡広告。脱衣場には映画のポスターが貼られ、色っぽい女性の姿に心をときめかせた。永らく見かけた銭湯も時の流れでいつの間にか見なくなり、今は広い駐車場を完備したスーパー銭湯が主流となった。
 このところ本州に行く際は大浴場を備えたホテルを選んでいる。それは湯船の中で手足を伸ばすことで気持ち穏やかになり、まして朝風呂に浸かると何とも言えない解放感から自然に『ふぅ~』と口から出てしまう。思いがけず一緒になった外国人も同じで、顔を見合わせると笑顔がこぼれた。
 我が家では寒い季節になると、にごり湯の入浴剤で温泉気分を味わい〝いい湯だな〟と頭の上にタオルを乗せる。これは冷たいタオルが〝のぼせ〟を防ぐ効果もあるからだ。
 いつもお風呂の中で頭をよぎるのは、「あの時こうすれば・・」と素の自分に戻れ、そこから「これをやってみよう」と閃き、これが次の糧に繋がる。
 因みに温泉に浸かる猿の話題がニュースになり、これは長野県内でニホンザルの生態観察している公園で、子猿が湯に浮かぶ餌を取ろうと誤って湯に入り、続いて群れも入ったのが始まりだと言う。
 このお湯の温もりこそ、母親の胎内で過ごした記憶ではなかろうか。その羊水は36~38度だそうで、まして生命は遥か昔に海から生まれ、太古の水温はぬるま湯だったとか。人がお風呂を好むのは、DNAに組み込まれた悠久の浪漫なのかも知れない。

◎プロフィール

〈このごろ〉テレビドラマ「VIVANT」と「ラストマン-全盲の捜査官」をBlu-rayで観る。CMやテロップに煩うことなく面白さを堪能出来た。

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