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エッセイSP(スペシャル)

さくら・・

たかやまじゅん

2024年4月15日

 今年の北海道は、気温の上がり下がりから陽気が迷走をしてやきもきしたが、白く閉ざされていた野山や家の周りにようやく春が廻ってきた。
 春と言えば、「梅は咲いたか 桜はまだかいな」と江戸端唄で謡われるようにさくらが待ち遠しくなる。桜の種類は古来からの山桜があり、交雑種し自生するのが100種、江戸時代には400種近く植えられ、園芸用に育成されたのが里桜で、今は各地で300種類ほど栽培されるそうな。
 花の色合いは開花の時期や温度で微妙にトーンが変化し、パァ~ッと明るさのある濃い色、薄っすら控えめの淡い色など様々なバリエーションが咲き誇る。しかしこの季節は気候の変化が著しく、いじわるな花嵐と桜流しに遭うまでの10日~2週間ほどを楽しませてくれる。万葉の時代から詩歌や物語、そして絵画でも描かれ、お花見で心を癒すなど、長い歳月を人の生活と密接に結びついていた。
 3月末から4月の始めになると全国各地からニュースで桜の開花宣言が伝わり、絶景写真にはたいがいお城と満開の桜が多く、ふるさとの小田原城でも約300本のソメイヨシノがお堀端から天守閣を彩っている。東京では皇居の千鳥ヶ淵や一千本と謳われる隅田川の堤が名高い。やがて桜前線は北上を続けて、札幌ではたいがいGW辺りが見頃となる。
 こうして〝開花の声〟を耳にすると心の華やぎを隠せず、今年も京都を訪ねた。そこは桜の宝庫であり、早咲き遅咲きどれを視ても画になり、桜をあしらった和菓子も愉しみの一つ。京都で桜と言えば、桜守で知られる造園家16代目佐野藤右衛門さんの「桜を見るなら好きな桜を一本決め、四季を通し見ることで自然を感じる」と言われた言葉が浮かぶ。
 幸いにも家の近くでは梅と桜が一緒に咲き、いち早く春を感じることが出来た。そして向かいのお寺で枝ぶりが良かった老木は年々枯れ始め、遺った枝が芽吹きじっと花開く刻を待つ〝胴吹き桜〟を眼にすると、その生きる強さを感じ力が沸いてくる。
 花は太陽に向かって咲くが、桜の花は恥じらう様に下を向いているので、見上げると桜色に包まれ自然と微笑みがこぼれた。
 そして楽しかった日々が想い起こされ、一片、二片...ほろほろと肩に降り掛かかり亡き人を偲ばせるのだった。

◎プロフィール

〈このごろ〉ストックしたCDが増え、系統別の仕分け直しに一ヵ月を要した。少し処分すればいいのだが何れ使う日もあるとまた仕舞う。

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