艶歌もいいね~
2024年5月27日
三月末にテレビのワイドショーで、大谷翔平選手が球場練習中に六花亭の花柄紙袋を持っていた。その後、A新間が「六花亭の道外初店舗はカリフォルニア」と報じた。「販売目的ではない」と広報は別の意味を言う。
そんな話題の六花亭の店で私は時々買い物をしていたある日、店の壁に「弾き語りの世界」徳久広司・ 岡千秋出演のポスターを見た。岡氏を以前私は取材をしていた。戸川よし乃(現中村仁美)公演だった。帯広文化ホールで戸川さんと岡氏が歌った。閉幕後、コメントを求めて私は楽屋の岡先生と対面した。上気した涙顔で「愛弟子の今後も期待する」と称えた。
入場券を手にして五月九日に、少し早めに六花亭に着いた。夕食代わりにと商品を探していると、右側に岡氏の顔が見えた。「以前帯広文化ホールで取材した者です」と声をかけた。すると岡先生は笑顔で、迷わず握手を求めてきた。「戸川よし乃さんのコンサートでした」と言うと、先生の隣のマスク顔の女性が「わたしです」と応えたので驚いた。
上階の「はまなしホール」で左側に着席した。徳久先生は自ら作詞・作曲した「北へ帰ろう」などを歌われた。その後で岡先生が登場し「波止場しぐれ」「長良川艶歌」「浪速恋しぐれ」などを歌った。ピアノを弾き、自らのあゆみを語り、後ろにいる私の方を何度も振り返って笑顔を向けてきた。
岡先生が戸川さんへ提供した日本クラウンの曲(作詞=円香乃)では「十勝望郷歌」「松前半島」「涙岬」に惹かれ、私はくり返して聴いた。スケールの大きな歌で、北海道の風景と重なり、人の情愛や哀しみの円女史の詞を戸川(中村)さんの艶のある歌声がドラマチックに響かせた。「涙岬」の詞に「涙岬は北岬」と句がある。以前、私は厚岸から浜中へ向かう海岸沿いの涙岬の遊歩道を歩いたことがある。断崖上で荒波を見下ろすと足がすくんだ。
精神的な苦悩によって、人の魂は更新されるのか。歌もまた断崖のあやうさを秘めて劇的になるのかもしれない。
中島みゆき、松山千春、吉田美和の輩出地十勝。艶歌の中村仁美もいいね。今の私の「推し」である。
◎プロフィール
〈心況〉洋楽も邦楽も、民族音楽も多様に聴いている。ポルトガルのファドは憂いと人生の哀感を歌う。音楽は癒しのオフタイムだ