MJ
2024年6月 3日
MJと聞いて、何を思い浮かべるだろう。アルファベット略が氾濫する時代、個々の頭に浮かぶものは一つではないかもしれない。
きっかけは分からないが、最近ユーチューブでMJを視聴するのが私の夜の日課となっている。MJとは、マイケル・ジャクソン。
十代のころ、朝は目覚ましではなくラジカセにタイマーをセットして音楽で目覚めていた。学生時代、私はまっとうな社会人になれるのか先行き不安なくらい眠くて仕方なかった。毎朝の起床は苦行とも言えるものだった。そんな辛い朝でも、好きな曲がかかったりすると脳が目覚め血流も増え、やっとこサ起き上がるのだった。今では睡眠時間がどんどん短くなり活動時間が増え、老化はある意味進化と言えるかもしれない。
ある朝とても甘く伸びやかな歌声が流れてきた。軽快で心浮きたつテンポの間奏、コーラス。まだまどろみの中に佇んでいた私は、誰とも分からぬ歌い手に一瞬で恋に落ちた。
誰?
今のように即座に情報が得られる時代ではない。ラジオ局の担当者、或いはレコード店の店員の前で歌ってみせて「この曲知ってますか?」と聞くしかない。直立不動で口ずさむのも不気味なので、手をリズミカルに、身体は軽くスウィングさせたりして。そういう努力の効果むなしく「ちょっと分かりません」と返答されたら撃沈。うら若き乙女だった私にそんな芸当は無理だった。
マイケル・ジャクソンの『ロック・ウィズ・ユー』だと知ったのは、だいぶ後のことだった。知った瞬時の私の気持ちはまた十代の乙女に戻る。
「あなただったのね? マイケルッ!」
めぐり逢う感動シーン。
マイケルの軌跡はこれまでに幾度となくメディアに取り上げられているので、ここで書く必要もない。MJ信者、MJファンからすれば、私は無知そのもの。ただ、オンライン動画が配信される時代になり、今だから見ることのできる日本未公開の映像が得られているのは事実である。
晩年は目まぐるしく変貌していく容姿とスキャンダルも世間の耳目を集めた。でも、あなたはいつも、どんな姿であっても格好良くて美しかったよと、マイケルに伝えたい。
二〇〇九年六月二十五日。『キングオブポップ』マイケル・ジャクソン急逝。
睡眠薬と併用した麻酔薬プロフォポールによる急性中毒との結論が下されている。五十歳でこの世を去った彼の命日がもうすぐだ。
◎プロフィール
〈 作者近況 〉さえき あさみ
船旅人気が再燃。コロナで一躍名が知れた客船で知人が旅に出て、コロナに感染。笑っていいのか迷う