駅前通りのラーメン屋
2024年9月 9日
地方の町にあっては衰退感があるようなところは、産業など大変であるだとかのようにいろんな状況を抱えているところが多いかも知れない。そして商店街を眺めているとさみしさもちょっと感じられることもある。でも本当のことを述べるのならどこの町でもそれなりに個性や魅力そして歴史というものもあるはずだろう。
ある日、十勝管内浦幌町へと出張した。以前から役所や事業所などを挨拶回りしていた。この町でも、若い人たちが自分たちの町をそれなりに盛り上げるべく様々な企画やイベントなどを考案されて街づくりの発展に寄与して行こうとしている人達が、それなりに登場してきているような話が新聞からも人々からも聞いたことがある。そしてどこの町でも時代がその時々に応じてそういう人たちを登場させてきているのではないだろうか。そういった芽というものは登場するべくして顕れてゆくものだろうという気がしている。
お昼時になった。
駅前通りへ行くと「てんま」という食堂がある。どこかおしゃれな感のある外観の店で、ある日ぼくはお昼時に入って行った。そこはほかにもおいしい料理はたくさんあるだろうけれど、初めて訪れた時に注文したのが醤油ラーメンだった。おかしなことにレストランだったのにあまり気付かずにラーメンを食べたくて注文したのだった。
そして出てきたのは入れ物がちょっと風変わりで、なんというか黄色い色合いの丼が少し細目で縦にちょっと長くしたようなもので、黄緑や紫の色合いの花が描かれていて、どこかケバい様な感じがする。箸を付けてちょっと具を寄せて麺を少し掬ってズルズルッと口に運んで食べ、そしてレンゲでスープを口にする。なんだか麺もスープもどこか地味に昔風に感じられるのだが、しかしその直後、うまっ、とする美味しさが感じられた。なんだかちょっと風変わりだけれど楽しくておいしいラーメンだなと感じられた。食べている自分は充分に満足している。ふくやかで笑顔を見せている女将さんは、どこか優しそうで楽しそうな表情を見せている。
「いやぁ、うまいなぁ。なかなかの味で引っ張られてならないよな...」
「そうですかぁ」
そう返事しながらニコニコとした笑顔をしているのだった。
奥の厨房にシェフの背中が見えるのだがまだ一度も顔を見たことはないが、ちゃんと美味しく作られているというところが伝わってくるのだ。納得してしまった。
人も街も料理も思いによって創られて広がって行くのだろうなと思うのだった。
◎プロフィール
帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。