縁・無心で臨めば
2024年9月23日
NHKのEテレで異なる分野で活躍する二人の達人をゲストに招き対談する人気の〝スイッチインタビュー〟を観た。プロレスラー・アントニオ猪木氏と天才脳外科医・天野篤先生の対談が再放映され、道を極めた話に私は感動した。
私は猪木さんを四十五年前に取材していた。地元誌に興味のある人々を独断で取り上げた『人間訪問』という連載。名の知れた歌手や大学の教授など取材は多岐にわたった人選で、撮影を担当したカメラマンは畏友だった故・名畑智行氏だった。
実現困難な試合にチャレンジするプロレスラー・猪木氏に若いときから私は心酔していた。ボクサー・モハメド・アリと猪木氏の異種格闘技戦やパキスタンでの格闘家アクラム・ペールワンとの闘い。「夢に向かって無心で取組めば、出会いは偶然ではなく必然となる。普通人の考えることはつまらない」とアントニオ猪木氏。外科医の天野先生は「最初から諦めちゃいけないということ」と応えていた。
さて、心臓外科医の天野医師の師匠ともいえる存在が須磨久善外科医だとその番組で知って私は驚いた。須磨先生は二〇〇一年に放送された「NHKプロジェクトX・奇跡の心臓手術に挑む」に登場している。
その当時、ジャーナリストの高野孟氏が野趣豊かな十勝に遊びに来て乗馬や釣りを楽しみ、東京人と十勝人が交流する〝十勝渓流塾〟を発足させた頃だった。私は事務局兼世話人となり、〝モモの仲間通信〟という会報を発信した。
テレビで知った天才須磨医師を後書きの中で文章にすると、高野氏は「須磨先生なら存じてます。ゴルフなどで一緒に廻る友だちだよ」との話に再び驚いた。須磨医師を礼賛した私の文を誰かが須磨医師へ転送したらしい。須磨先生から「近くに来ることがあれば湘南にある葉山の自宅に遊びに来てください」とのメールに感激し、親しいK氏に浮つくままに「須磨先生と会ってもいいのかな?」と私が問うと彼は「社交辞令ですよ。真に受けたらダメだよ」と釘をさされた。
須磨先生からのメールを再読すると「寄ってください、社交辞令ではないですよ」との追伸があった。
不思議な過去の出来事を思い返して「無心で臨めば、出会いは偶然ではなく必然となる」というアントニオ猪木氏の自論に『共感』していた。
◎プロフィール
心況(よしだまさかつ)
人との出会いを縁と呼ぶ。中島みゆきは「縦の糸はあなた、横の糸は私」と歌う。半分の糸で絆になる~