傘・・
2024年11月11日
豊臣秀吉の「醍醐の花見」を描いた屏風図に大きな赤い傘が描かれている。遡れば古代エジプトの壁画にもあり、これは貴人を陽射しから遮る日傘として使われてきた。日本には平安時代に中国から伝わったとされ、やがて和紙や竹で番傘、蛇の目傘、日傘などが江戸時代に作られた。
童謡で「~蛇の目でお迎え嬉しいな」や「遊びに行きたし傘はなし・・」などの歌も知られている。子供の頃と言えば、傘もささず無理やり水たまりに入り服をずぶ濡れにして母親に叱られた。いま近くの小学生も下校時に同じことを遣っているのを目にし、いつの世も同じようだ。そして誰が書いたものか黒板や運動場の砂場に、相合傘での落書きも懐かしい。
今では折りたたみ傘は当たり前だが、かつては「なんであるアイデアル」のCMに触発されこぞって買い求め、当時メーカーのシェアは3割以上を保ったそうな。北陸に行った時、「弁当忘れても傘忘れるな」の格言を聞いた。それだけ雨が多い地域であろうが、昨今の天候は予断が許されない。ましてこの夏の暑さは異常で男性が日傘をさしているのも見掛けた。
この傘だが、乗り物や出先で手すりなどに掛けておくとたいがい忘れてしまう。鉄道会社で、2017年の忘れ傘は220万本あり、返却率は少なく、遺失物法の改正で保管期間は一ヵ月となった。雨の日も、陽射しの強い日も傘は必需品となり、歌の文句ではないが傘は人を支える強さを持っている。
近年は平均寿命が伸び「傘寿」(さんじゅ)、又は「八十寿」(やそじゅ)の祝いを迎えることも少なくない。これは傘の字を略し上下に分けると〝八と十〟になり、傘寿のテーマカラーは黄色や紫色で、日本百貨店協会が提唱するのはオレンジ色であった。
昭和38年の「高校三年生」でデビュー以来、青春歌謡から抒情歌、そしてブルースや文芸・歴史歌謡など幅広い芸歴を誇り、映画各社への出演を始め舞台公演も数多く、その歌声が今なおステージで輝きを増す舟木一夫さんは、来たる12月12日に傘寿を迎えられる。
◎プロフィール
〈このごろ〉 秋が足早に過ぎ、冬が駆け足でやって来た。毎年この繰り返しだが、これも生きている証である。この冬はどんな雪模様なのか・・。