食堂はどこにあるのか
2022年3月14日
ある日のお昼時。母上が、 「御飯がないからどこかへ食べに行こう」 と当然のごとく言った。時折そういうことがあるのだ。そして本人の頭には、天丼か、親子丼か、はたまたパスタだとかなどが浮かんでいるに違いない。 「なに、ご飯がないってか...。
平等という儚さ
2022年3月 7日
平等という言葉をよく口にする人がいる。実は障がい福祉の仕事をしている私もそうだ。日頃職員には「利用者への支援は常に平等を考えて」と伝えている。とりわけ聴覚障害者への配慮は十分すぎるほど気を付けている。健聴者と同様に情報が伝わるように。聴覚
取材のあとで
2022年2月28日
取材で子供たちと会うのが楽しみだ。コロナ感染防止で顔はマスクで隠れるが、目と髪型で人物を特定する。 顔と名前を一致させるには記憶力も低下してきたが、出会った人の名前を漢字でおぼえるように心がけている。「書初め大会」の取材へ向った。公民館の
薬味・・
2022年2月21日
蕎麦を手繰る際に欠かせないのがワサビとトウガラシで、素材を引き立てる脇役だが適度に刺激を与えてくれる。中でも東京〝やげん堀〟の七味唐辛子は、デパートの江戸老舗展が開催するのが待ち遠しかった。それは必ず薬味の調合師が来ているので、「山椒を効
不遇な勉強
2022年2月14日
テレビニュースで戦場やアフリカとかどこかの子供たちが、バラック小屋あるいはがれきの中で勉強している映像を何度か観たことがある。政治や生活の環境としては大変ではないのかと思う。それでも子供たちは皆明るい表情をしていることに、ぼくは項垂れてし
一体どうなってるの?
2022年2月 7日
昨年の大みそかは長崎にいた。師走の仕事は予想以上の忙しさで旅支度もできず、出発当日にトランクに洋服を放り込み空港へ向かった。初めての地、土地勘もなく、下準備もなし。旅行雑誌を買ったものの目も通さないまま現地に着いた。こういう時は半日市内観
雪おんな・・
2022年1月31日
雪のない温暖な土地で育った私は、子どもの頃から雪だるまを作るのに憧れ、ニュースで雪の便りを見るにつけ、行ってみたいと思っていた。それが今では、雪の朝に家の前で雪かきをする生活となり十数年経つ。日によって雪の降り方、時間で違う雪質なども分か
不思議な世界
2022年1月24日
知人の歌手からジャズステージを行ないますと連絡があり、後日の夕刻、紹介された街中の店「L」へ向かった。 ドアを開けるとそこはどこの店にもあるような店内とは趣が違っていた。それぞれ離れている小さな三つのテーブル席は形も大きさも違う。また一角
恥のかきすて
2022年1月17日
焼き物に詳しい人や食器好きの人はご存知かと思う。波佐見焼。HASAMIという表示に「ああ、あれ?」と気付く人もいるかもしれない。私は全然知らなかった。 十分な感染防止対策をとって、この年末年始は長崎で過ごした。観光客はまばらで、雪のない歩
来し方・・
2021年12月20日
久々に東京の知人から、出張で来札するとの報せを受けた。その日は予定の時間より早めに出掛け、地下鉄すすきの駅から地上に出て、信号待ちの人込みから交差点角のビルにある行き付けの店に目を向けると、窓の灯りが見当たらず一抹の寂しさを覚える。 風の