この世にこんな旨いものが!
2024年11月 4日
十九の時、彼の故郷の家に遊びに行った。大学生になり初めて付き合った彼だった。結婚の約束もしていないのに何故そんな敷居の高い場所へのこのこ出かけて行ったのか、今でも思い出せない。彼はオープンな人だったので仲良し家族に紹介したいと、ただ軽い気
老いを生きる
2024年10月 7日
父は今年米寿を迎えた。母が他界してから暫く一人暮らしをしていたが、持病のため毎日の見守りが必要になり、サービス付き高齢者向け住宅に引っ越した。略してサ高住である。私は一緒に住んでもいいよととりあえず提案はした。しかし仕事を持っているので日
山で一人暮らす女
2024年9月 2日
しぶといウイルスとの共存をしつつ、ほぼ日常を取り戻した私達。だが自然災害を始め、世界情勢、物価上昇やオーバーツーリズムなど、これでもかと負の風が吹き荒れている。アフターコロナはたくさん旅をしようと息巻いていたが、私の気持ちはすっかり萎えて
おだまり
2024年8月 5日
私は疲れていた。仕事では納期が波のごとく押し寄せて、長距離走者の日々だった。そんな状況の時、人は非日常を求めるのかもしれない。「旅に出よう」 CMの一シーンが脳内の銀幕に映し出された。土日含めて最低四日間の休みを取りたい。でも行き先は?
気になるお店
2024年7月 1日
最寄りの地下鉄駅の近くに、行きつけの八百屋がある。独自の仕入れルートを駆使しているようで、規格外品などの野菜を安く提供してくれる。品ぞろえも量も豊富とは言えないし、本日の目玉商品などは、売り切れ御礼。補充はできないので、早い者勝ち。でも安
MJ
2024年6月 3日
MJと聞いて、何を思い浮かべるだろう。アルファベット略が氾濫する時代、個々の頭に浮かぶものは一つではないかもしれない。 きっかけは分からないが、最近ユーチューブでMJを視聴するのが私の夜の日課となっている。MJとは、マイケル・ジャクソン。
もう一つの目
2024年5月 6日
ある朝、気づいた。札幌の地上へと上がるエレベーターの中で、ドアに貼られたステッカーである。"あぶないよ ドアにさわらないでね " 子供が手を出して怪我をしないよう、注意喚起のステッカーだ。ほぼ毎日目にしていたにもかかわらず、こ
オフには注意
2024年4月 1日
先日所用で関東方面に出かけた。この日真新しい靴下をはいた。なぜなら、空港保安検査場を通過しなければならないからだ。くるぶしを覆う靴は安全検査上、脱いでスリッパに履き替え、金属探知ゲートをくぐることになっている。過去そんなルールができて初め
冬は転んではいけない
2024年3月 4日
札幌はまだ雪に閉ざされたまま。今冬の異常な高温の繰り返しによって、氷の路面はいつになく危険だった。 とある日、妹から連絡が入る。サ高住で暮らす高齢の父が、転倒して肩を骨折したとのこと。あれほど一人での外出は禁止と厳命していたのに。駆け付け
五人に一人
2024年2月 5日
私の勤める福祉事業所は、一般企業での雇用が難しい障害者に働く場を提供している。地域の企業からの依頼で、軽作業も時々入るが、主な仕事は縫製だ。 昨年十二月、七十を過ぎたA子さんが入ってきた。聴覚障害者で、発音は僅かに理解できる。 事業所に見