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一円の祈り

2023年3月 6日

 旅先で神社仏閣を訪れるのが好きだ。名刹に限らず、御朱印目的でもなく、知識があるわけでもない。街歩きの途中偶然古寺や神社に出会う時「私は導かれここに辿り着いた気がする」などとファンタジックな運命を抱く。その出会いに感謝し、丁寧に参拝する。 

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それぞれの事情

2023年2月 6日

 今年の正月午前零時四十分。私は京都東山区智積院の境内で除夜の鐘を打った。もやもやしていた事が、大きな鐘の響きと波動で一気に消え去ったようだ。今年は慎重な性格でありつつも、これと決めた道をグイグイ進もう。重いガウンを脱ぎ捨て、晴れ晴れと今年

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除夜の鐘

2023年1月16日

 「昨年は大河ドラマで街も賑わったことでしょう? そういえば、養老孟司先生のお住まいも確か...」「ええ、駅で何度かお見掛けしたことがありますよ」 鎌倉から来たという中年のご夫婦が答えた。話すたびにめがねが曇るのが鬱陶しいようだ。「北海道は

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ダークイヤー

2022年12月 5日

 結局三年たってもコロナの終息は見られず、令和四年も終わろうとしている。長いようで、慣れて過ぎてしまえばあっという間で、また「一年は速いね」という常套句の挨拶を交わしあう時期となった。この一年、国内外共に暗いニュースの多い年だった。 今年は

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思い出を呼び起こす

2022年11月 7日

 フランシス・コッポラの映画『ゴッドファーザー』全三部作が、三週連続BSで放送された。第一作公開から五十周年記念企画だったらしい。半世紀の時を経ても褪せることのない大作だ。テーマ曲『ゴッドファーザー愛のテーマ』の美しくも物悲しい旋律は、裏社

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グレイヘア

2022年10月 3日

 ある時ふと、グレイヘアにしたいと思った。 近藤サトさんが火付け役だったろうか。『白髪をあえて染めない生き方』なるものに多くの共感が寄せられている。まだ五十代なのに白髪をそのままにしておくなんて、しかも人前に立つ仕事をなさっているにもかかわ

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何がどうなろうと

2022年9月 5日

 先日珍しく古本ではなく、本屋で新しい本を購入した。『流転の海 読本』。宮本輝著『流転の海』のガイドブックだ。『流転の海』を読破した人も、これから読む人も、読んでいる途中の人も、これがあれば頭を整理しながら読み進むことが出来るだろう。 昨年

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引 き 際

2022年8月 1日

 潮時、引き際を見極めるのは簡単なようで難しい。独断できる場合はいいが、置かれた状況との兼ね合いもある。「もうや~めた」と仕事仲間に迷惑をかける人は困る。 先日私の福祉事業所の調理担当員が突然辞めた。まだ六十代半ば。ある不安材料を抱えながら

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七十四歳の新人

2022年7月 4日

 「そんなに履歴書を汚すもんじゃない」 昭和の時代、年配の管理職の男性が中途退職する若い社員に話すのを耳にしたことがある。汚すとは、転職により履歴書の経歴欄に入社と退職の行数が増えることを意味していた。 最近の調査で、新卒で入社した会社を定

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思い出、泣き笑い

2022年6月 6日

 『ブレーメンの音楽隊』はドイツのグリム童話の中の一つだ。ロバの上に犬が乗って、その上に猫、その上に鶏が乗っている挿絵は、あまりにも有名だ。それを見るたびに、遠い思い出が蘇り私は涙目になる。 中学生のころ部活は英語クラブに入っていた。顧問の

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